はたらく毎日が、つらくなったとき

仕事を続けるか、いったん離れるか。その判断はとても重いものです。当院ではご本人の状況とお気持ちを丁寧に伺い、納得のいく形を一緒に探していきます。診察当日に診断書をご用意することも可能です。
こんなサイン、見過ごしていませんか
- 朝、布団から起き上がれない
- 会社のことを考えると胸が苦しい
- 頭にもやがかかったように働かない
こうした変化は、心が限界に近づいているサインかもしれません。背景には適応障害が隠れていることもあります。
職場の人間関係、長すぎる労働時間、配属先の変化、ハラスメント。きっかけは人それぞれです。「みんな頑張っているのだから」と自分を追い詰める前に、専門家に話してみる選択肢があることを知っておいてください。
「休む」という決断

働く方からよく伺うのは、「以前なら難なくできた仕事に時間がかかる」「ミスが増えた」「アイデアが浮かばない」といった訴えです。これに加えて気分の落ち込み、寝つきの悪さ、食が細るなどの変化が重なっているなら、放置せず受診をご検討ください。
治療のアプローチ
働く環境にアプローチする
メンタル不調への対処として、まず考えたいのが環境の調整です。多くの方は2〜3ヶ月の休職をとられますが、適切な長さは人によって変わります。短く区切るのか、じっくり休むのかは、診察を重ねながら判断していきます。
ハラスメントが要因であれば、復帰の条件として配置転換を希望することもあります。業務過多が背景にあるなら、仕事量の調整を会社に求めるとよいでしょう。働き続けながら治療する場合も、業務軽減を求める内容の診断書を発行できます。職場との折り合いがどうしてもつかないときは、転職や退職という道も視野に入る選択肢です。
お薬を使う
眠れない、不安が強い、何もする気が起きない――こうした症状には薬の力を借りる方法もあります。気持ちを落ち着けるもの、気分の沈みを引き上げるもの、眠りを助けるもの。状態に合わせて組み合わせます。
ただし、「薬には頼りたくない」というお気持ちも尊重します。診察のなかで、その方に合った道筋を一緒に考えていきます。
休職するときの進め方
休職は、医師の診察と判断があって初めて手続きに進めます。診察で必要と判断した場合には、診断書に病名・症状・休む期間を記載してお渡しします。これを職場に届け、療養生活がスタートします。
書類の提出先は会社によって異なり、直属の上司、人事、総務などさまざまです。出社できる状態にないときは、電話で事情を伝え、診断書を郵送する方法でも問題ありません。
手続きの流れ
準備として確認したいこと
- 提出が求められる書類の種類
- 会社の休職規定
- 認められる休職期間の上限
- 復職時に利用できる制度(時短勤務・段階的な出社など)
復帰のときに使える制度を知っておくと、療養中の見通しが立てやすくなります。
手続きのステップ
1 診察を受ける
症状や経緯を伺い、休職が妥当かを判断します。
2 診断書を作成
病名・症状・期間を記します。会社から記載のリクエストがあれば事前にお伝えください。
3 会社へ申し出る
診断書を踏まえ、上司や担当部署と今後について話し合います。
4 書類を提出
提出先を事前に把握しておきましょう。郵送対応も可能です。
5 療養開始
※話し合いがうまくいかない、職場とトラブルになったといった場合は、再受診またはお電話でご連絡ください。
通院のペース

休職中はおよそ2週間から1ヶ月に1度のご来院をお願いします。回復の度合いを見ながら、期間を延ばしたり短くしたりと調整していきます。職場復帰の準備として、リワークプログラムを取り入れることもあります。復職の準備が整ったと判断できた段階で、その旨を記した診断書をお渡しします。産業医が常駐する企業では、産業医の最終判断を経て復職となります。戻った後も、しばらくは経過観察のための通院を続けてください。
経済面のこと
休職に踏み切るうえで頭をよぎるのが、お金の不安です。職場のプレッシャーから解放されても、収入が途絶えることへの心配は別物として残ります。あらかじめ預貯金の状況を整理し、療養中の生活費の見通しを立てておきましょう。
給与の扱いは会社ごとにまちまちで、独自の病気休暇を設けている企業もあれば、有給休暇の消化を促す企業もあります。加入している健康保険組合から支給される傷病手当金の仕組みも、早めに調べておくと安心です。
傷病手当金の書類について
申請書は勤務先から受け取れます。協会けんぽや関東ITソフトウェア健康保険組合などの様式に対応していますので、診察時にお持ちください。主治医が記入する欄を埋めてお渡しします。
休職期間の過ごし方の目安
第1フェーズ:何もしない時間(およそ1ヶ月)
- 頭と心を完全にオフにする
- 「休んでいる自分」を責めない
仕事への責任感は、いったん脇に置きます。「無責任でかまわない」と自分に許可を出すことが、回復への入り口です。復帰のことを考えるのは、まだ先で構いません。
第2フェーズ:好きなことに触れる(およそ1ヶ月)
- 楽しめる活動を少しずつ取り入れる
- 軽い運動で体を慣らしていく
休んで取り戻した気力を、自分のために使う時期です。とはいえ体力は落ちているので、散歩程度から始めましょう。
第3フェーズ:復職に向けた準備(およそ1ヶ月)
- 戻る環境について考える
- 心理療法を取り入れる
復帰が近づくと、不安が再び顔を出すことがあります。心理療法を通じて、自分の考え方のクセや、ストレスへの向き合い方を学んでおくと、復職後の助けになります。
復職してからの注意点

復職は大きな前進ですが、いきなり以前の自分に戻れるわけではありません。「もう治った」と周囲から仕事を任されすぎることも、逆に腫れ物のように扱われて居心地が悪くなることもあります。再発のリスクは残っている――この前提を忘れないでください。再発を招きやすい場面は、大きく3つあります。
ブランクから生まれる感情
長く現場を離れていたことによる、劣等感・孤立感・申し訳なさ。こうした感情は仕事そのものではなく、職場にいる人に向きます。復職して最初の1週間ほどで強まりやすく、ここで支えがないと早期の再発につながりかねません。乗り切るには、「出勤して、帰宅する」だけを目標にする日があってもいい、と思えること。穴埋めは後からでも間に合います。
自分のポジションへのもどかしさ
戻った直後は、業務量も責任も控えめに設定されることが多くなります。一方で、忙しく立ち回る同僚を目にすると、自分との落差にやるせなくなることがあります。長引けば、再び気分の落ち込みに引きずられてしまうことも。比べないことが何よりの処方箋です。「今は特別な時期」と割り切る視点を持ってみてください。
周りの期待と自分の実感のずれ
時間が経つにつれ、戦力として見られる場面が増えていきます。本人はまだ本調子に届かない感覚を抱えているのに、外からはそう見えない――このギャップが広がると、無理を重ねて再発につながります。本人・職場の双方に関わる課題なので、率直に話せる関係を保ち、回復の力を信じることが鍵です。
抱え込む前に、一度お話しください
休職に至る方には、ある傾向があります。任された仕事に真面目で、自分のことを後回しにしてでも応えようとする方が多いのです。心や体が悲鳴を上げていても、なかなか手を止められない――そういう優しさを持っています。
ですが、本当に守るべきものはご自身の心と体、これから続く人生です。健康や命と引き換えに続けなければならない仕事は、どこにもありません。
不調を感じたら、立ち止まる。自分を労る時間を持つ。それは弱さではなく、自分を大事にする力です。病気について知ることは、自分自身を知ることでもあります。自分の状態を理解できるようになると、ストレスの扱い方も少しずつ見えてきます。
休むときから戻るときまで、当院がそばで支えます。気になることがあれば、どうぞ気軽に足を運んでください。